こんにちは。
日本の大ピアニストにして素晴らしい教育者でもあった「安川加寿子」先生についてまとめました。
また安川先生について語った著書「蘇る、安川加寿子のことば」という本が名著だったため、本のレビューを兼ねつつまとめてあります。
本記事の内容
- 前半は、安川加寿子先生について
- 後半は、「蘇る、安川加寿子のことば」のレビュー
ピアノ音楽の好きな方はもちろん、ピアノを勉強されている方にも参考にしていただける内容にまとめました。
と言うのも、安川先生は日本のピアノの歴史上トップクラスに素晴らしい音楽家だった方です。(もう亡くなられています。2022年は生誕100年を迎えます)
それではさっそく!
安川加寿子先生について
重要なところだけをピックアップしてまとめました。もちろん参考文献は「蘇る、安川加寿子のことば」からです。
かなり簡単にまとめているけど、とにかく凄い方。そして、波乱万丈なところもかなりありますね。
そして音楽の才能はもとより、教育者としても「偉大だった」と言われています。
有名な門下生がたくさんいるのでまとめ
実はこの「蘇る、安川加寿子のことば」の著者である「青柳いづみこ」さんも安川先生にピアノを師事していた方です。
その他にもたくさん安川先生の門下生の方がいらっしゃるので、まとめておきました。(順不同)
- 青柳いづみこ
- 平尾はるな
- 浜口奈々
- 岡本愛子
- 井上二葉
- 堀江真理子
- 秦はるひ
- 多美智子
- 菅野潤
- 三舩優子
- 高良芳枝
- 重松正大
お子さん・お孫さんについて
たまに「安川先生のお子さんやお孫さんは?」ということが、話題になっているので、著書の中で語られているものをピックアップしました。
- 子供は3人(女の子1、男の子2)
- 上の娘にはピアノを教えている
- 本にお孫さんとピアノで遊ぶ安川先生の写真あり(お孫さんは4人)
音楽のプロになった方は、いないようですね。
安川先生の有名なドビュッシーの楽譜
ドビュッシーの楽譜に「安川版」と呼ばれる校訂版がありますね。
この楽譜は、安川加寿子先生が当時「フランスの楽譜は高価すぎる…、フランス直伝の教えを受けられない人々のために」という思いで出版されたそうです。
そしてすごいところは、安川加寿子さんが亡くなられて30年ほど経つにも関わらず、現代でも十分使える点。
詳しくは、下記の記事をどうぞ。
-
【比較】ドビュッシ-のおすすめ楽譜はどれ?【アラベスク、月の光など】
続きを見る
【名演】安川先生の演奏を聴いて思うこと
安川先生は、なんと録音もバッチリ残されています。
聴く方法は、Amazon Music UnlimitedとYouTubeの2とおり。
中でもAmazon Music Unlimitedは音質良く、安川先生の録音を聴けるのでオススメです。
(30日間は「無料」で聴くことが可能で、解約も自由です)
凄いことは、今聴いてもかなりピアノが上手いということ。
チャーミングな音、抜群のリズム感、そしてあまりにも素晴らしいテクニック。(個人的な感想です…)
「当たり前じゃん!」と思うかもだけど、安川先生が活躍した頃の日本のピアノのレベルってかなり低かったのです。
17歳で安川先生が帰国した時は1937年。
おそらく当時は、日本の中でもダントツにピアノが上手い天才少女だったはず。
著書の中で安川先生は「天才と呼ばれているけど、世界にはもっと才能を持った人がたくさんいるので、謙虚になる」
というようなことを語られています。
ではここからは、著書「蘇る、安川加寿子のことば」のレビューにうつっていきます。
蘇る、安川加寿子のことばをレビュー
読書しつつ、気になるところや、有益そうなところをピックアップしました。
- 日本語よりもフランス語が得意
- 子供の頃、練習はキライだった(おそらく10歳までの練習時間は1日30~60分程度。本のインタビューから推測)
- 10歳で音楽院に入ってからは毎日3時間の練習
- 後年、子供でも30分以下の練習だと上達はゼロと語っています
- リサイタルでは練習してもうまく弾けない、終わった後にうまくピアノが上達している
- ゼルキンは、戦前は好きだったけど、今はだいぶ変わってしまった。バックハウスは大ピアニストだと思う
- 「日本人の個性をしっかり出すことが重要」と
- 「男の人の方が楽だと思う」←昭和初期ですからね…
- 子育て(子供3人)と先生とピアニストで忙しくて大変だった…確かに大変そう…笑
- 「曲の難しいところほど、さりげなく弾かねば…」と
- ピアノの生徒に才能がある場合、私の解釈を押しつけません(良い先生はみんなこんな感じですね)
ラザール・レヴィ先生からのアドヴァイス
安川先生は、フランスで10歳から名教師ラザール・レヴィ先生に師事しています。
本を読むかぎり、安川先生はかなりレヴィ先生の影響を受けていると思われます。
レヴィ先生は、有名なクララハスキルやフランス・クリダなどを育てた名教師。(Wikipedea)
日本人でも、安川先生の他に、田中希代子さん、井上二葉さん、遠藤郁子さん、原智恵子さんなどが師事しています。
レヴィ先生に教わったことで、多くの人に役に立ちそうなところをピックアップしておきました。
- レガートで弾く時は、指だけでなく腕も使う
- フォルテで弾く時は、肩の力が指まで伝わるように
- 手の位置、指づかいはよく考えること
- 4の指は、ピアノを歌わせるのに役に立つ
- 強い音では、4の指を避ける
- 大事なことは、人によって全く違う(指や手の形など)
- 教える人は、生徒と一緒に進歩しなくてはならない
酷評の嵐について
安川加寿子さんほどの方でも、一時期ものすごい酷評にあっていたそうです。
とはいえ、おそらく安川先生は、今でいう「SNSの誹謗中傷」のようなものにあっていたのではと。
ピアノの天才で、地位もあって、大金持ちで、美貌もあって「嫉妬」されていたのだと思います。
安川先生は、悪評に対して「火のないところに煙は立たない」とおっしゃっていて、すごく人格者だったのだと思いますね。
安川加寿子先生の愛した楽器(ピアノ)
基本的に、安川先生は派手な楽器より、柔らかい響きの楽器を好まれたように感じます。
- 自宅のピアノは、ブリュートナーとヤマハ
- 1948年から1951年はエラール
- ベーゼンドルファーが好き
- ベヒシュタインは、日本の気候に合わない
- 「ピアノの寿命は4、5年くらい」と語っている
「楽譜に忠実に」という話
安川先生が、この著書の中でレヴィ先生から「楽譜に忠実に演奏するように」とのアドヴァイスを受けたそうです。
これで思うことは、19世紀は作曲家の書いた楽譜を好きに変えて演奏するようなスタイルが、一般的になっていました。
レヴィ先生は、このスタイルに対して「楽譜に忠実に」といっているわけで、今の日本で「楽譜に忠実に」というと、かなり違和感を感じるはず。
というのも、最近はコンクールもたくさんあって、みなさん基本的に楽譜に忠実。
なので、今レヴィ先生や安川先生が現在の日本にいらしたら「もっと自由に!」とアドヴァイスしたんじゃないかな、と思います…。
後年、このお2人は「楽譜以上のことも読み取らなくてはいけない」と語っています。
まとめ:蘇る、安川加寿子のことばをレビュー
実は子供の頃ピアノを習っていた先生が、安川先生に師事した方で、上記の写真をピアノに飾っていたのです。
子供心に「なんだかわからないけど、すごそうな人だな〜」と思ってました。笑
おそらく、安川先生が1996年に亡くなられて、ピアノに飾っていたのだと思います。
ちなみにフランス人の大ピアニストが「安川先生は、こういう風に解釈されてて…」
というようなことを語っていて、安川先生のすごさはそのリスペクトのされ方だと思いますね。
最後に著書「蘇る、安川加寿子のことば」がオススメな方をまとめて終わりにします!
- 日本のピアノ教育のルーツを知りたい
- 音大に通っている、または卒業した
- ピアノを教えている
- ドビュッシーの楽譜は安川版が好き
- フランス音楽が好き
という方には、すごく役に立つようなことが満載の本になっていると思います。
文字は大きめ、対談形式も多数で読みやすいです。
それでは終わります!