こんにちは。
こういった方のお役に立てる記事になっています。
まず、現在手に入るドビュッシーの楽譜をご紹介します。
およそ日本で2022年4月現在、手に入る楽譜は上記のとおり。
楽譜の良し悪しは、時代によっても変化するため、2022年の4月に調べなおしています。
ドビュッシーの楽譜「原典版の出版社が少ない(2社)」
ドビュッシーの楽譜の原典版は、デュラン版とヘンレ版の2社だけ。
他の作曲家だと、ウィーン原典版やペータース版、ベーレンライター版などの有名な出版社の楽譜があるけど、ドビュッシーに関しては、上記の2択。
結論としては、デュラン版がおすすめです。
デュラン版
原典版というのは、簡単にいうとドビュッシーが書いたこと以上のことは、一切書いていない楽譜のことを言います。
このデュラン版は、ドビュッシーに関しては世界で一番使われていて、信頼性の高いフランスの出版社の楽譜です。
ドビュッシーに関しては、間違いなく最も素晴らしい楽譜だけど、デメリットとして「初心者の方が独学したりする場合には向かない」ということ。
それから輸入品の関係で、楽譜の値段が高騰していることも稀にあります…。
(2022年4月現在、円安ではありますが、デュラン版の価格は安定してます)
ドビュッシー デュラン版のページ
ヘンレ版
ヘンレ版はドイツの出版社で、原典版の出版社としては、世界で一番有名な出版社。
一つ注意点として、ドビュッシーはフランスの作曲家だけど、ヘンレ版はドイツの出版社という点です。
ドビュッシーの原典版では「デュラン版の一択」という感じだけど、デュラン版の値段が高騰していたり「手に入りにくい時の代替品」として役に立つ楽譜です。
ドビュッシー ヘンレ版のページ
ドビュッシーの楽譜「校訂版ではどれがオススメ?」
続いては「校訂版」をご紹介します!
校訂版のメリットは
- ペダル、フランス語の訳がついている
- 指遣いが書いてある
- つまり、独学もある程度可能
デメリットとしては、ドビュッシーが書いた以上のことが書いてあるため、上級者の方には「校訂者のクセ」のようなものまで吸収してしまう点です。
なんとなくのオススメ順でご紹介してみます。
安川加寿子版
安川加寿子さんは、日本を代表するピアニスト、ピアノ教育者だった方で、戦後のピアノ業界の発展に尽力された方です。
この楽譜は、安川加寿子さんが「フランスの楽譜は高価すぎる…、フランス直伝の教えを受けられない人々のために」という思いで出版されたそうです。
そしてすごいところは、安川加寿子さんが亡くなられて30年ほど経つにも関わらず、現代でも十分使える点。
デメリットとしては、指遣いは、やや「4」の指を多様するところと、ペダルの記載があるものの、完璧ではない点だと思います。
良いところは、フランス語の難しい原語の解釈があるところと、素晴らしい解説があるところ。さらに価格も安く手に入りやすいです。
校訂版では、まず最初に検討してみると良いと思います。
ドビュッシー 安川版のページ
安川加寿子先生について、詳しくは下記の記事でまとめています。
-
【偉大】蘇る、安川加寿子のことばをレビュー【解説あり】
続きを見る
中井正子版
長いこと、ドビュッシーの校訂版としては、安川版が日本のトップを走っていたけど、最近ではこの中井版も素晴らしい楽譜として注目されています。
中井正子先生は、東京芸術大学の付属高校の在学中からフランスに留学をして、フランス音楽を勉強された方です。
素晴らしいところは、安川版と同じようにペダルと指遣いの記載があるところ。
さらにフランス語の翻訳もあり、価格も安く手に入りやすいです。
個人的には、指遣いのクセも安川版よりも少なく、ペダルの完成度も高い印象です。しかもフランス語の解釈も楽譜上に直接書かれてある分、安川版よりも見やすい。
安川版を良い感じに改良してあるような印象で、初心者の方が使うには、一番使いやすい楽譜は、この中井版だと思います。
ドビュッシー 中井版のページ
フェルメーヌ・ムニエ版
この楽譜は、山崎孝さんがフェルメーヌ・ムニエさん(パリ音楽院名誉教授)の運指のアドヴァイスなどまとめつつ、校訂された楽譜です。
もちろん素晴らしい楽譜ではあるけれど、上記の2冊(安川版、中井版)のような、フランス語の解釈やペダルの解釈はありません。
それゆえ、初心者の方には使いにくく、音大生が使うなら原典版の方が良いので、正直なところ中途半端な印象ではあります‥。
というか、安川版と中井版が素晴らしすぎて、見劣りしてしまう感じです。
全音楽出版
これは日本で最も昔から使われている楽譜です。
とはいえ、フランス語の解釈はなく、ペダルの記載もありません。
ですので、もしペダルがいらないなら「原典版」で良いし、ペダルの解釈が欲しいなら「安川版か中井版」の方がずっと使いやすい。
さらに、運指にしても、研究者による運指より、実際に演奏されている方の運指の方が、ずっと信頼できるように感じます。
井口基成版
こちらも日本では古くから使われている楽譜です。
校訂者の井口基成さんは、安川さんと同じく、戦後のピアノ教育に尽力された方です。
結論を言ってしまうと「昔は良い楽譜だった」だと思います。
昔、いろいろな楽譜がない時には、素晴らしい楽譜でした。
今は、原典版も安く手に入るし、素晴らしい校訂版もあります。
というわけで、特に検討する必要はないと思います。
全音ピース
これは使える楽譜です。
もし「ドビュッシーのあの1曲だけ弾きたい!」という場合には、検討する価値が高いです。
とはいえ、そういった方は、基本的に初心者の方のはず。
ドビュッシーは、運指とペダルが難しいのが特徴。つまり「どうしてもこの1曲だけ…」というのでなければ中井版の方が圧倒的に使いやすいのでオススメです。
ドビュッシーピアノ名曲集って使えるの?
全音楽出版「ドビュッシーピアノアルバム」
この「ピアノアルバム」に含まれる曲は、
- アラベスク第1番
- 月の光 (『ベルガマスク組曲』より)
- 夢想
- サラバンド (『ピアノのために』より)
- 小さな黒人
- 人形へのセレナーデ (『こどもの領分』より)
- 小さな羊飼い (『こどもの領分』より)
- ゴリウォーグのケークウォーク (『こどもの領分』より)
- 沈める寺 (『前奏曲集 第1巻』より)
- 亜麻色の髪の乙女 (『前奏曲集 第1巻』より)
- ミンストレル (『前奏曲集 第1巻』より)
- ヒース (『前奏曲集 第2巻』より)
- 雨の庭 (『版画』より)
- 水の反映 (『映像 第1集』より)
この通り。
本当は「安川版、中井版」の方が使いやすいけど、ピンポイントで「この曲を弾きたい」というのであれば、オススメできる楽譜です。
ドビュッシ-/ピアノアルバム /全音楽譜出版社/クロ-ド・ドビュッシ-
ヘンレ版「ドビュッシー小品集」
こちらの収録曲は、
- ボヘミア風舞曲
- マズルカ
- 夢
- ロマンティックなワルツ
- ノクターン
- スケッチ帖より
- 演奏会用小品
- ハイドン礼賛
- レントより おそく
- 英雄の子守歌
- ピアノのための小品
- 哀歌
これもピンポイント弾きたい曲があるときに使えます。
とはいえ、選曲がマニアックで、初心者の方に使いにくい楽譜ではあります。
ドレミ出版「ドビュッシーピアノ名曲集」
この曲集に入っている曲は、
- グラドスアドパルナスム博士
- 象の子守歌
- 人形へのセレナード
- 雪は踊っている
- 小さな羊飼
- ゴリウォークのケークウォーク
- アラベスク第1番
- アラベスク第2番
- 月の光
- パスピエ
- 亜麻色の髪の乙女
- 沈める寺
- 夢
- 小さな黒人
- 雨の庭
こちらは、選曲のセンスが良いです。
デメリットとしては、使いにくさと信頼性に欠けるところ。
完全に遊びで弾いてみたい方向けの楽譜ではあります。
ピンポイントで「弾いてみたい曲が揃ってる!」という場合だけ、検討してみる価値があると思います。
繰り返しになるけど、初心者の方が使いやすいのは「安川版、中井版」の方です…。
まとめ:ドビュッシ-のおすすめ楽譜はどれ?【アラベスク、月の光など】
では最後に本当にオススメな楽譜だけをまとめて終わりにします!
- デュラン版(原典版)
- ヘンレ版(原典版:デュランが手に入らない時だけオススメ)
- 安川版(校訂版)
- 中井版(校訂版:安川版と迷ったら、こちらの方が使いやすいと思います)
この4冊は、初心者のかただけでなく、プロの方や音大生も実際によく使われている楽譜です。
それではこのあたりで終わります。
最後までありがとうございました。