こんにちは。
ベートーヴェンのピアノソナタは「ピアノの新約聖書」と呼ばれるほどの名曲ですので、数多くの「名盤」が存在します。
本記事では、
- 歴史的な名盤
- 現代の巨匠
- 最新の名盤
の3つに分けつつご紹介しました!
かたっぱしから手に入るものを聴き、そして主観にかたよりすぎないようAmazonのレビューなども参考にしてます。
ベートーヴェン ピアノソナタ「歴史的な8つの名盤」
まずは「歴史」に残る名演奏を。
1. ヴィルヘルム・バックハウス
バックハウスは1884年にドイツで生まれたピアニスト。
ベートーヴェン直系弟子として知られます。(ベートヴェン→ツェルニー→リスト→ダルベール→バックハウス)
「鍵盤の獅子王」という名でも有名で、ドイツの伝統をもっとも引き継いだピアニストとしても有名です。
ここから紹介する全ての名盤が「バックハウスに影響を受けている‥」と言っても過言ではないはず。
こまかい事は置いておいて「ベートーヴェンの魂」を伝える伝達者のような印象を持っています。
2. ヴィルヘルム・ケンプ
ケンプは1895年にドイツで生まれたピアニストで、バックハウスと比較されることが多いですね。
バックハウスと比べると、ずっと音もマイルドで叙情的。そして日本で大ファンが多いです。
作曲家の池辺晋一郎さんも「ケンプの大ファン」だそう。
イメージとしては、高齢になってからの録音が多いので「近所のめっちゃうまいおじさんがピアノを聴かせてくれる」ようなイメージ。
もちろん「名人」です。味があって、慈しみのある演奏です。
ベートーヴェン / ピアノ・ソナタ全集 ヴィルヘルム・ケンプ
3. クラウディオ・アラウ
アラウは1903年にチリで生まれて、その後アメリカで最も活躍していました。
しかし8歳で最初のコンサートを開くと、同じ年にドイツに留学しています。
それゆえ特にドイツ作品を得意としていて、ベートーヴェンでもたくさんの名盤を残しています。
印象としてはバックハウスをさらに重厚にしたような演奏で、特に日本人ピアニストからの人気が高い印象。
さらにバックハウスは、ペータース社から「アラウ版」と呼ばれるベートーヴェンの楽譜も出版しています。
こちらは別記事「ベートーヴェンのピアノソナタのオススメ楽譜」の中で紹介しています。
4. アルトゥール・シュナーベル
シュナーベルは、1882年に現在のポーランドで生まれたピアニスト。
なんと世界で1番最初にベートーヴェンのピアノソナタを全曲録音をしたのは、このシュナーベルです。
それゆえバックハウスと同じくらい全てのピアニストに影響している…と言っても過言ではないですね。
19世紀的な自由なスタイルの演奏ということでも有名です。
「ベートーヴェンのピアノソナタのオススメ楽譜」の中でも少し語っているけど、シュナーベル版と呼ばれる楽譜の出版もしています。
現代の感覚ではテンポも自在に変化させたりと「自由すぎでは?」という感じはするけど、19世紀の文化を知るには最適。
しかし例えばソナタの32番などは「かなり楽譜に忠実」で現代でもすごく評価されそう。とも感じます。
とにかくベートーヴェンのピアノソナタでシュナーベルを聴くのは、マストだと思います。
ベートーヴェン / ピアノ・ソナタ全集 アルトゥール・シュナーベル
5. スヴャトスラフ・リヒテル
リヒテルはロシアで1915年に生まれたピアニスト。
無骨で神経質、世界観を引っ張り出すのがとにかくうまい…
「楽譜に忠実」と言われているけど、「余計なアイディア」を排除しているようにも感じます。
グレングールドが「リヒテルの演奏を聴くとトランス状態になる」と語っているけど、確かにその通りかと。
鬼気迫る演奏で、その集中力とエネルギーは圧倒的です。
6. エミール・ギレリス
ギレリスは、1916年にロシアで生まれたピアニストでよくリヒテルとも比較されることの多いピアニストですね。(ギレリスが1歳年下)
「鋼鉄のタッチ」で知られる抜群のテクニックで、格調高い演奏が特徴です。
故中村紘子さんも「ギレリスに習いたいと思っていた」と著書の中で語っていました。
あと同じロシアのピアニスト「キーシン」も、元々は「ギレリスに習いたいと思っていた」と同じように語っています。
たしかに憧れたくなる魅力を持った方で、ボクも高校時代にギレリスの「熱情」にはかなり憧れました。
3楽章を聴くと、中村紘子さんやキーシンの気持ちがわかるかもです。(?)
7. ルドルフ・ゼルキン
ゼルキンは1903年にボヘミアで生まれたピアニスト。
幼いときにウィーンに渡り、なんと12歳でウィーン交響楽団と共演している大天才です。
ウィーンで活躍したことで、特に「ドイツ音楽の後継者」とも言われています。
ゼルキンの特徴は「端正」なことと「理性的」なこと。
しかし独特なテンションを持っていて、後半にかけて「爆発」していることが多いです。
それゆえピアノソナタのような作品にピッタリの演奏家と言えそうですね。
あのホロヴィッツが「ゼルキンに憧れる」と言っているのは、このバランスの良さだと思います。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番、第8番、第23番、第26番
8. 園田高弘
園田高弘さんは、戦後の日本の音楽界をリードしたパイオニア的な方です。
ベートーヴェンのピアノソナタは、全て録音していて、さらに「園田版」と呼ばれるピアノソナタの楽譜まで出版されています。
ちなみにこの「園田版」は素晴らしい著書で「ベートーヴェンのピアノソナタのオススメ楽譜」の中でも、ご紹介しています。
1曲ずつのピースになっているので、初心者の方にもオススメ。
演奏は、上記の中ではゼルキンに近い印象です。
ゼルキンは「端正」で「知性的」。そこに日本人的な「真面目さ」が加わった感じ。
情報が少なかった時代に「西洋の音楽をキッチリ日本に伝える」ということに、使命感を持っていたのだと思います。
とにかく「日本のギーゼキング」と言われるほどの名手です。
ベートーヴェン ピアノソナタ「現代の巨匠の6つの名盤」
1. ダニエル・バレンボイム
バレンボイムは、1942年にアルゼンチンで生まれたピアニスト。
10歳ころには、ベートーヴェンのピアノソナタを全て演奏していたほどの大天才。
バレンボイムの魅力は「カリスマ性」がありつつ、音楽に対して「誠実」なところにあると思います。
さらに「デリケート」でありつつも「豪快」。
YouTubeにすべてのライブ映像が残っているので、この動画はオススメです。
2. アルフレッド・ブレンデル
ブレンデルは、チェコで生まれオーストリアで活躍したピアニスト。(現在は引退)
ブレンデルは、ゼルキンや園田高弘さんに近く「知性派」として、知られています。
楽譜「ウィーン原典版」の中で、ブレンデルによる運指や解説もしているほど。
知性と音の美しさが魅力的で、もし音大を受験したりコンクールに挑戦するときは、すごく参考になるピアニストだと思います。
ベートーヴェン / ピアノ・ソナタ全集 1992~95 アルフレート・ブレンデル
3. マウリツィオ・ポリーニ
ポリーニは、イタリアで生まれた現代を代表するピアニスト。
ポリーニはインタビューで「生きているうちに、ベートーヴェンのピアノソナタをすべて録音できるかわからない…簡単なことではない」と語っていました。
しかし2014年見事にこの全集を完成させました。
ちなみにボク自身が実際の演奏を聴いて1番素晴らしいと思ったのは、ポリーニの演奏するハンマークラヴィーアソナタ(第29番)
時間を超越する不思議な体験でした。
4. ルドルフ・ブッフビンダー
ブッフビンダーは、日本で知名度が低いものの、オーストリアのウィーンなどでは大人気のピアニストです。
ブッフビンダーの魅力は、自由にしてウィーンの伝統を重じているところ。
すでに亡くなった巨匠の中ではケンプに1番近いと思います。
5. アンドラーシュ・シフ
アンドラーシュシフは、ハンガリーで生まれたピアニストで、特にバッハの演奏では有名ですね。
ベートーヴェンもいくつか録音を残していて正統派でありながら、独特なインスピレーションを得て演奏しているのが魅力的。
実際に東京に来日した時にソナタ第26番「告別」の演奏を聴いたけど、まったくエゴを感じさせないような自然体な演奏でした。
とにかく純度の高い演奏に思います。
ベートーヴェン / ピアノ協奏曲全集、ピアノ・ソナタ第23番
6. 内田光子
内田光子さんは、日本人として最高の名手として有名だけど、幼少の頃からウィーンに留学していたこともあって、伝統を感じさせるような演奏です。
実際に30~32番を演奏したコンサートで聴いたことがあるけど、驚異的な集中力で引き込まれるような演奏でした。
おそらく「命がけ」で、ベートーヴェンに取り組まれているのだと思います。
Beethoven ベートーヴェン / ピアノ・ソナタ第30・31・32番 内田光子 輸入盤
ベートーヴェン ピアノソナタ「最新の3つの名盤」
最新の名盤は全て全集になっていて、価格も高いです。聴く場合はまず「Amazonの「Music Unlimited」」で聴くのがオススメです。(解説記事はこちら)
1. ボリス・ギルトブルグ
ボリス・ギルトブルグは、1984年モスクワ生まれで生まれたピアニスト。
世界最高の名教師であるアリエ・ヴァルディになんと5歳から習っていたというから驚き。
ヴァルディ先生の秘蔵っ子。
2013年のエリザベート王妃国際音楽コンクールで第1位を獲得して、その後ベートーヴェンのピアノソナタをすべて録音しています。
センスが抜群な演奏で、説得力のある解釈をされる方です。
それゆえ音大生とかにもすごく参考になりそう。レヴィット
また自身でYouTubeを開設しているようで、いくつかの演奏を聴くことが可能です。
2. イゴール・レヴィット
レヴィットは、1987年にロシアで生まれたユダヤ系のピアニスト。
ユダヤ人はピアノが上手いことでも知られていて「ホロヴィッツ、ルービンシュタイン、バレンボイム、キーシン」と名手はみなさんユダヤ人です。
ドイツのハノーファーはピアノのレベルが高いことでも知られていて、レヴィットも13歳からハノーファーで英才教育を受けています。
そのハノーファーでトップレベルの実力を持ち、現在はハノーファー音楽大学の教授に就任しています。
これからレヴィットに師事するためにドイツに留学する日本人が増えるのでは?と思ってます。
演奏は、かなりスピーディーで響きの美しさが魅力的。
レヴィットもYouTubeを開設してますので、参考までにどうぞ。
» レヴィットのYouTube(途中までしか聴けないものが多いですが…)
3. コンスタンチン・リフシッツ
リフシッツは、1976年にウクライナで生まれたロシア人ピアニスト。
現在は色々と大変な境遇かとは思いますね…。
リフシッツは、18歳の時になんとバッハのゴールドベルク変奏曲を録音してグラミー賞にノミネートされることで、一躍注目されることになりました。
その後、巨匠ブレンデルの元でピアノを勉強し、ベートーヴェンでもたくさんの名演を残しています。
個人的には、最新のベートーヴェンの録音の中ではぶっちぎりに素晴らしいと思います。
強靭なタッチでありながら魅力的で、世界観がとにかくすごい。
「ケタ外れの天才」と呼ばれたりするけど、本当にケタ外れに思います。
YouTubeには全く動画がないので、Amazon Music UnlimitedもしくはCDで聴けます。
まとめ:ベートーヴェン ピアノソナタの名盤
- バックハウス
- ケンプ
- アラウ
- シュナーベル
- リヒテル
- ギレリス
- ゼルキン
- 園田高弘
- バレンボイム
- ブレンデル
- ポリーニ
- ブッフビンダー
- シフ
- 内田光子
- ギルドブルグ
- レヴィット
- リフシッツ
と、やや多いけどこれで以上です!