こんにちは。
今回は、シューベルトの「即興曲 Op.90-2」を「ピアノ上達に役立つ」をコンセプトにまとめてみました。
この記事では、「曲の背景や題名の意味、難易度、弾き方や楽語の意味、オススメの名演6人とオススメ楽譜3選」をご紹介。
同じ時代の音楽や絵画、日本史なども知ることで、より上達や楽しさをアップするきっかけになればと思います。
シューベルト「即興曲 Op.90-2」の背景や意味を

歴史を知って演奏するのも大事。ということでまとめました。
- 1827年に作曲。「4つの即興曲 Op.90(D.899)」の第2曲
- 「Impromptu」は「即興曲」という意味。その場の思いつきを感じさせる、自由な性格の作品
- シューベルトが即興的に楽譜に書き上げた作品
- 第1曲と第2曲は、シューベルトが生きていた1827年に出版された
シューベルトが亡くなるのは翌年の1828年。短い生涯の、最後に近い時期に生まれた作品ですね。
明るく始まるけど、最後は短調に
この曲は、右手の流れるような三連符が印象的。けれど、それだけではないところも面白い。
- 冒頭:変ホ長調で、三連符の音階が軽やかに流れていく
- 前半の途中:変ホ短調に変わり、明るい響きに陰りが生まれる
- 中間部:ロ短調に移り、舞曲のようなリズムが前に出てくる
- 後半:冒頭の音楽が戻ったあと、中間部の素材を使ったコーダへ
- 最後:冒頭と同じ変ホ長調に落ち着くのではなく、変ホ短調で終わる
明るいまま終わるかと思ったら、最後に景色が変わる。そんなところにも、シューベルトらしさを感じますね。
同年代の有名なピアノ作品は?
同時代の作品を聴くことも、すごく上達の助けになると思っています。
「即興曲 Op.90-2」が生まれた1827年前後には、こんなピアノ作品も。
- ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ 第32番 Op.111」:1822年に完成。最後のピアノ・ソナタ
- シューベルト「ピアノ・ソナタ 第18番 D.894」:1826年に作曲。「幻想」の名でも知られる作品
- シューベルト「4つの即興曲 Op.142(D.935)」:1827年に作曲。Op.90と同じ年に生まれた、もうひとつの即興曲集
ベートーヴェンの晩年から、ロマン派の世界へ。「即興曲 Op.90-2」は、そんな時代の音楽ですね。
同年代のピアノ以外の作品は?
歌曲や室内楽、オーケストラの作品では、このあたり。
- シューベルト「弦楽四重奏曲 第14番『死と乙女』」:1824年に作曲
- ウェーバー「オベロン」:1826年に初演されたオペラ
- メンデルスゾーン「夏の夜の夢」序曲:1826年に作曲。17歳の時の作品
- シューベルト「冬の旅」:1827年に作曲。歌とピアノによる、24曲の歌曲集
「冬の旅」と同じ年の作品、と思うとちょっと聴き方も変わりそう。
ちなみに「夏の夜の夢」の有名な「結婚行進曲」は、後の1843年に加えられた音楽。序曲とは作曲された時期が違います。
同じ時代の芸術作品も
1827年前後には、絵画でもこんな作品が。
- コンスタブル「干し草車」:1821年に制作された絵画。イギリスの田園風景を描いた作品
- ドラクロワ「サルダナパールの死」:1827年に制作された絵画。大きな画面と劇的な表現が印象的
- ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」:1830年に制作。フランスの七月革命を描いた作品
- 葛飾北斎「神奈川沖浪裏」:1830〜1832年頃の浮世絵。「富嶽三十六景」の一枚
あの有名な北斎の大きな波も、シューベルトの即興曲から数年後。同じ時代の作品と知ると、少し身近に感じますね。
同じ時代の日本史と世界史もサクッと
「即興曲 Op.90-2」が作曲された1827年、日本は江戸時代の文政10年。
- 日本:1825年、幕府が異国船打払令を出す
- 日本:1828年、シーボルト事件が起こる。禁じられた日本地図などの持ち出しが問題に
- イギリス:1825年、ストックトン・ダーリントン鉄道が開業。蒸気機関車の時代が始まる頃
- ウィーン:1827年、ベートーヴェンが亡くなる。「即興曲 Op.90-2」と同じ年
- フランス:1830年、七月革命でシャルル10世が退位。ルイ・フィリップが国王に
ちょっと歴史を知っておくのも楽しい!
シューベルト「即興曲 Op.90-2」の難易度は?

「即興曲 Op.90-2」は、中級の後半から上級への橋渡しとして考えたい曲。
右手の音階が速く動くので、指がよく回ることは必要。さらに、音の粒をそろえながら、音楽の流れや響きの変化まで表現するところが難しいですね。
ヘンレ版では、9段階の難易度で「6(中級)」に分類されています。
中級といっても、気軽に弾けるという意味ではなく、音階の基礎ができている方向けの作品。譜読みができることと、軽やかに仕上げられることには、なかなか距離がありますね。
「即興曲 Op.90-2」と近いレベルの作品は?
得意・不得意でも変わるけど、次に取り組む曲を考えるなら、このあたりも候補に。
難易度の順番を厳密につけたものではなく、練習で求められる力を比べるための目安です。
- シューベルト「即興曲 Op.90-3」:速い音階よりも、旋律と伴奏の弾き分けが課題。音を歌わせる力を育てたい時に
- シューベルト「即興曲 Op.90-4」:軽い分散和音と、中間部の歌い方が課題。同じ曲集の中で聴き比べるのもおすすめ
- ショパン「ワルツ Op.64-2」:この曲より取り組みやすいと感じる方も。速い音型と、ゆったりした旋律の切り替えを学べる
- モーツァルト「ピアノ・ソナタ K.545 第1楽章」:全体としては取り組みやすい側の目安。ただし、音階を均等に美しく弾く課題は共通
リストの「ため息」やショパンのバラードやスケルツォより、まず取り組みやすい候補にはなると思います。
とはいえ、「音階が得意だから大丈夫」と思って弾いてみると、左手にもいろいろ仕事がある。そこがまた面白い曲ですね。
シューベルト「即興曲 Op.90-2」弾き方・練習のポイント
大事なのは、三連符がただ速く並ぶのではなく、ひとつのフレーズとして聴こえること。練習のポイントをサクッとまとめました。
- 右手は、運指を決めて短く区切る:親指をくぐらせる場所で、音量やリズムが急に変わらないように
- 三連符ごとにアクセントをつけない:3音ずつを確認する練習のあと、数小節の長い流れにつなげる
- リズムを変える練習は補助として:付点などで指の動きを確認したら、元の三連符に戻して均等さを聴く
- 左手だけでも音楽を作る:低音の動きと和音の響きを聴き、右手の流れを支える弾き方を考える
- 長調と短調の変化を聴く:同じように指が動く場所でも、和声が変われば表情も変わる
- 中間部は、旋律と和音を弾き分ける:和音を全部同じ強さで鳴らさず、聴かせたい声部を見つける
- ペダルは、和声と響きで調整:三連符の輪郭がぼやけないように、まず少なめで試してみる
- コーダだけを取り出して練習:最後の緊張感に引っぱられて、急にテンポが走らないように
- 速さは少しずつ上げる:手首や腕が固まる時はテンポを戻し、楽に弾ける動きを確認する
まずは、小さな音でも粒がそろって、左手を聴く余裕がある速さから。
速さを競うより、流れの中に歌がある演奏を目指したいですね。
シューベルト「即興曲 Op.90-2」の楽語を解説
「即興曲 Op.90-2」に出てくる主な楽語と、強弱の指示をまとめました。
また重要なものに特化して、あまりにも有名な(crescendoクレッシェンド)などは省略しています。
- ben marcato → 音を十分にはっきりと、際立たせて
- fz(forzando)→ その音を強く、際立たせて
- ffz → その音を非常に強く、際立たせて
- accelerando → だんだん速く
冒頭の「legato」と、中間部の「ben marcato」の違いを意識すると、音楽の表情も変わってきますね。
「はっきりと」といっても、全部の音を強くたたくという意味ではなく、旋律やリズムが伝わるように。三連符の流れと、中間部の輪郭を弾き分けたいところです。
シューベルト「即興曲 Op.90-2」で聴くべき名演のまとめ

シューベルトの即興曲は、特に名演奏が多い曲の1つだと思っています。
オススメはまずはこの6人。シフ、ツィメルマン、ルプー、リパッティ、ピリス、ブレンデル。
以下では、聴き比べの時に注目したいポイントも添えました。同じ曲でも、テンポや響き、フレーズの取り方で印象が変わるのが楽しいですね。
アンドラーシュ・シフ
ハンガリー出身のピアニスト。バッハやベートーヴェンとともに、シューベルトの演奏でも知られています。
達観した名演で、現代で最高の演奏の1つだと思っています。
この曲を取り上げた公開レッスンもあります。英語ですが、弾きながら説明しているので、実際の音を頼りに見てみるのもおすすめ。
クリスチャン・ツィメルマン
ポーランド出身のピアニスト。ショパンに加え、シューベルトの即興曲も名演を残しています。
ボクが音楽高校に通っていた頃も、たくさんの人がこの名演を聴いていました。
注目したいのは、速い音型の中での音のそろえ方や、強弱の幅。音階が上下する時に、ひとつのフレーズをどう作るか、楽譜と見比べながら聴くのもいいですね。
ラドゥ・ルプー
ルーマニア出身のピアニスト。シューベルトやブラームスなどの演奏で、ぜひ聴いておきたい奏者。
美しい音色と、瞑想しているかのような名演だと思います。
こちらは2008年のミラノでの演奏として公開されているライブ音源がありました。
ディヌ・リパッティ
ルーマニア出身のピアニスト。33歳で亡くなりましたが、今も聴き継がれている録音が残っています。
個人的に、歴史上、最高のピアニストで、最高の名演を残しているピアニストだと思っています。
こちらは1950年、ブザンソンでの最後のリサイタルの音源。古い録音ですが、三連符の流れや、フレーズをつなぐ感覚に耳を向けてみたいですね。
リンクは「Op.90-2」が始まる5分4秒から。冒頭には「Op.90-3」も収められています。
マリア・ジョアン・ピリス
ポルトガル出身のピアニスト。モーツァルト、ショパン、シューベルトなどの演奏で名演を残しているピアニストです。
ボクも以前、ピリスを生で聴きに行ったことがあるけど、あまりにも素晴らしいものでした。
女性的な感性も光っていると思います。
また女性や子供さんが参考にすると、すごくピアノが上達するようなイメージもあります。
アルフレート・ブレンデル
シューベルトのピアノ作品を聴くなら、ぜひ候補に入れたいピアニスト。即興曲だけでなく、ソナタを聴いてみたい時にも。
ブレンデルといったら「知性」を感じるところ。
音楽高校や大学を目指すような方は、ぜったいにブレンデルを聴いて勉強することをオススメします。
シューベルトはウィーンで活躍したピアニストだけど、ブレンデルもオーストリア人ということで、その忠実な伝統を受け継いでいるピアニストですね。
音質良く名演を聴く
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同じ演奏家でも録音がいくつかあるので、曲名に「Op.90-2」や「D.899 No.2」を入れて探すと見つけやすいですね。
名演を聴く時は、音の立ち上がりや小さな音まで聴ける環境を作ることも、上達に役立つと思っています。
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シューベルト「即興曲 Op.90-2」のオススメ楽譜3選

楽譜はどれでも同じ?というと、運指や解説、資料の読み方などに違いがあります。「即興曲 Op.90-2」を弾くなら、まずはこの3つが候補に。
ヘンレ版「即興曲・楽興の時」
原典版を選びたい方には、ヘンレ版も候補に。ギーゼキングによる校訂と運指が付いた楽譜です。
商品番号は「HN 4」。Op.90とOp.142の即興曲8曲に加え、「楽興の時」6曲も収録されています。
この曲だけほしい方には、一曲版の「HN 373」も。曲集と一曲版を、使い方に合わせて選べるのも便利ですね。
ウィーン原典版「即興曲・楽興の時」
楽譜の根拠や、演奏についての解説も読んでみたい方に。自筆譜などの資料をもとに、ウルリヒ・ライジンガーが校訂した版です。
ロバート・レヴィンによる演奏の手引きと、パウル・バドゥラ=スコダによる運指が付いています。
個人的に、スコダはウィーンで活躍したピアニストということがポイントです。
商品番号は「UT 50297」。ほかの原典版と見比べながら、スラーや強弱、運指を考えたい時にも候補に。
またコスパの良い楽譜です。
全音版「シューベルト 即興曲・楽興の時」
国内で探しやすい、全音ピアノライブラリーの曲集。即興曲8曲と「楽興の時」6曲、全14曲をまとめて収録しています。
ほかの即興曲にも取り組みたい方には、使いやすい一冊ですね。ISBNは「978-4-11-107010-7」です。
この曲だけを用意するなら、全音ピアノピースの「即興曲 Op.90-2(PP-008)」も候補に。
遊びでこの曲にトライしてみたい方にオススメです。
将来、音楽を専門的に勉強したい方にはオススメ…ではないです…。
まとめ:シューベルト「即興曲 Op.90-2」の難易度・意味・オススメ楽譜・弾き方など
それでは最後にこの記事をサクッとまとめて。
- 1827年に作曲。「4つの即興曲 Op.90(D.899)」の第2曲
- 変ホ長調で始まるけど、最後は変ホ短調で終わる
- 「即興曲」は曲の性格を表す題名。その場で自由に即興して弾くという意味ではない
- 難易度は中級後半から上級への橋渡しが目安。三連符の均等さや、左手とのバランスが課題
- 楽語は、冒頭の「legato」と中間部の「ben marcato」にも注目。音のつなぎ方と、輪郭の違いを意識したい
- オススメの名演は、シフ・ツィメルマン・ルプー・リパッティ・ピリス・ブレンデルの6人
- 楽譜はヘンレ版・ウィーン原典版・全音版の3つが候補に
軽やかな三連符の奥に、歌や陰り、力強いリズムがあって、弾くほどに面白くなる曲だと思います。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までありがとうございました!