こんにちは。
マウリツィオ・ポリーニの名盤についてまとめてみました。
ポリーニといえば、「完璧主義」。つまりポリーニはすべての録音で「歴史的な名盤」を意識しているはず。
しかし、その中でも特に「名盤」と呼ばれているものを、主観と客観を含みつつまとめました。
20年以上ポリーニファンとしてすべての録音を聴いています。
本記事では、
- ポリーニについて簡単に
- ポリーニの聴くべき3つのポイント
- ポリーニの5つの名盤(ホントはすべて…)
3部構成になっています!
マウリツィオ・ポリーニについて
ポリーニについてサクッとまとめました。
- 1942年、イタリアミラノ生まれ
- 1960年 18歳でショパンコンクール第1位
- ルービンシュタインに「「今ここにいる審査員の中で、彼より巧く弾けるものはいない」と言われる
- 10年ほど演奏活動から身を引く
- 1971年ドイツグラモフォンから録音を多数(←歴史的な名盤も多数)
- 1995年 ザルツブルク音楽祭で「ポリーニ・プロジェクト」を開始
- レパートリ:ベートーヴェン、ショパン、ストラビンスキーなどのほか、ブーレーズ、ウェーベルンなどの現代曲
- 2006年にはドイツのエコー賞、フランスのショク賞、ヴィクトワール・ド・ラ・ムジーク賞、ディアパゾン賞、2007年にはグラミー賞最優秀器楽ソロ奏者部門やイタリアのディスコ・ドーロ賞を受賞など
「現代最高のピアニストは?」という質問に「ポリーニ」と答える人は、とにかく多いはず。
ポリーニの聴くべき3つのポイント
1. 模範演奏!?「完璧の代名詞」
ポリーニは完璧なピアニストの代名詞的な存在です。
もちろん「ミスがひとつもない…」という意味の完璧ではないですよ!
フレーズ、音楽性、タッチ、リズム、音色、曲の構成、などなどすべてが「完璧」という意味。
芸術で「完璧」という言葉を使うことはナンセンスだけど、それでもポリーニは「完璧」と呼ばれているところがすごいところ。
もちろん現在は80代ということもあり、違うアプローチをされている印象です。
実際にポリーニの演奏会に出かけたところ、ボロボロの演奏もありました…
しかし、そんなことはどうでも良くなるほどに素晴らしい音楽だったことは確かです。
ポリーニの「完璧さ」を聴いてみたいなら、若い頃の名盤がオススメ。(後ほどご紹介します!)
2. ポリーニは革命家?
ポリーニはインタビューで「何かに挑戦しているような曲じゃないと取り組む気が起きない…」と語っています。
確かにポリーニのレパートリーを見るとそうなってますね。
少し専門的だけど、ラフマニノフよりもプロコフィエフを好む…という感じ。
ポリーニの具体的なたくさんのインタビュー下記の本を参考にしてます。ポリーニが受けたアドヴァイスなども乗っており有益です。
マウリツィオ・ポリーニ 「知・情・意」を備えた現代最高峰のピアニストのすべて /音楽之友社
下記の記事でレビューもしてます。
-
【名著】マウリツィオ・ポリーニの新刊をレビュー
続きを見る
3. 時間短縮の魔法
ポリーニは曲を「全体的」に捉えているせいか、不思議なくらい時間が短く感じられます。
実際に、ベートーヴェンのハンマークラヴィーアソナタを聴いたところ1時間近い作品が、5分くらいに感じられたほど。
たしか2006年に来日した時に、音大生向けの「若葉シート」というものがあって、ポリーニから3メートルほどのところで聴かせてもらいました…
音楽で1番感動した体験の1つです。
ではポリーニ「名盤」を5つご紹介してみますね!
ポリーニの絶対的な5つの名盤
ほぼすべての録音が聴けると話題のAmazon Music Unlimitedで「ポリーニ」と検索したところ、なんと116枚も見つかります。
この中には、あまり世の中に出まわってなかったり、日本では売られていないものも含みます。
この中から5つに絞りました。
1. デビューCD:ペトルーシュカからの3楽章ほか
ポリーニはショパンコンクールで優勝してから、10年ほど表舞台には出てきていません。
本人いわく「小さいコンサートはしていた」とのこと。(ショパンコンクールの優勝者が小さいコンサートだけというのは、普通は考えられないこと)
さらに「まだ18歳で未熟すぎました…」と語っています。
この10年の間に何をしていたかというと、分かるかぎりでは、
- 物理学を学んでいた
- ミケランジェリのもとピアノを勉強していた
この2点。
しかし、ミケランジェリにピアノを学んでいたものの、ミケランジェリは「ポリーニに教えることは何もなかった…」
と語っています。
ボクは謙遜だと思ってます。
理由は、ショパンコンクールの優勝直後とはまるで演奏が違っているため。
ショパンコンクールの時の演奏は、「限りなくミケランジェリに似ている」と思います。
しかし10年の間に「ポリーニ流の美学」と「ポリーニ流の奏法」を身につけたように感じますね…。
物理学を学んでいた理由も、おそらく「いかにムダのない演奏法で」ということを研究していたのでは?と。
このグラモフォンから発売されたポリーニのCDは、その10年間の沈黙をやぶって登場し、世界の衝撃をあたえたもの。
「至高のピアノ音楽」というような演奏になっていて、絶対に聴いた方が良いピアノ音楽と言えると思います。
2. 音大生の模範:ショパン 練習曲集
こちらは、先ほどの録音ののちに発表した作品。ポリーニ30才。
いわゆる「ポリーニ=完璧」を言わしめた歴史的な名盤。
発表されたのは、1972年だけど、その時から音大やコンクールの模範演奏的な録音としても有名です。
もう50年ほど、半世紀も模範演奏であり続けるというのは「すごすぎる…」の一言。
普通は、時代とともに演奏の解釈も変わってくるものなのです。
しかし、この録音に関しては、まったく色褪せないですね…。
新しく登場したショパンコンクールの優勝者と比べても「あ、でもポリーニには敵わないよね…」
とどうしても思ってしまう、あまりにもすごすぎる名盤です。
ピアノ専門の音大生で、聴いたことのない方は、0人に近いと思います。
3. 完璧な演奏の代名詞:ショパン 4つのスケルツォ
こちらはポリーニが48歳の時の録音。
この録音が発表された時に言われたことは「これ以上何をお望みですか?」です。
ミスターパーフェクトと呼ばれた絶頂期もおそらくこの録音を残したあたり。
ポリーニの完璧さを体感するには、この録音が1番オススメです。
「完璧=冷たい」と言われたりもしているけど、個人的にはクセも感じるし「何かの美学を追求している…」ように感じます。
微妙に音符の長さが変わっているところもあるので、普通に考えた「完璧」というより、「ポリーニの美学的な完璧」
という風に思います。
イタリアの建築美を見るような感覚で聴くとその魅力が分かりやすいかと思います。
4. 時間短縮の魔法:ベートーヴェン ハンマークラヴィーアソナタ
ポリーニは、ベートーヴェンのピアノソナタの全曲録音する際に、
「全曲を目指すけど、生きているうちにできるかわからない…しかし挑戦する」と語っていました。
この録音の発表は2014年。つまりポリーニ72歳。
言ってみれば、ポリーニはベートーヴェンのピアノソナタをすべて録音するために72年もの歳月をかけているわけです。
18歳でショパンコンクールで優勝してから、なんと54年…。
ちなみにポリーニは10歳でハンマークラヴィーアを弾いてしまうような大天才です。(ハンマークラヴィーアは、1時間近い大作で、弾けるピアニストが限られるほどの難曲)
その方は、これほどの年月をかけて録音したものです。
もちろんすべて聴いたけど、ちょっと人間わざを超えてますね…。
オススメは、ピアノソナタ第29番の「ハンマークラヴィーア」です。
1時間ほどの時間はかかりますが、人生でもっとも感動したピアノ曲は、多分この録音。不思議なくらいに時間が短く感じられるのです…。
5. ポリーニさらなる境地へ
こちらはポリーニが、2018年76歳でショパンの作品を録音したもの。
若い頃に発表したものを、あらためて再録音しています。
収録はソナタ第3番やマズルカなど。
若い頃はイタリアの建築美のような完璧さで演奏していたけど、こちらの録音は何かを超越したような完璧さ…。
特徴は、フレーズにあると思っていて、「ものすごく息が長い」というか「1曲を1つの呼吸」のようにポリーニは考えているのでは?
と思ってしまいます。
ポリーニが最終的に行き着いた「境地」のような録音で、こちらも間違いなく名盤です。
まとめ:ポリーニの絶対に聴くべき5つの名盤
ではまとめつつ終わりにします。
ポリーニを聴くべきポイント
- 比類なき完璧さ
- ポリーニの革命的な要素
- 時間短縮
ポリーニのおオススメ名盤
- デビューCD
- ショパン:練習曲集
- ショパン:4つのスケルツォ
- ベートーヴェン:ピアノソナタ
- ショパン:2018年の録音
と、いちおうまとめてみたけど、正直「シューマン、シューベルト、ドビュッシー、ピアノコンチェルト多数」なども、ポリーニはたくさんの名盤を残しています。
ここでご紹介したものは「あえて選ぶなら…」ということ。
「どれも素晴らしい」というのが、ポリーニの特徴だと思っています。
ぜひいろいろ聴いてみてください!