こんにちは。
この記事では、ハイドンのピアノソナタに挑戦するときに必要な情報をマルっとまとめています。
具体的に、
- ハイドンのピアノソナタの「人気作品」&「傑作」
- ハイドンのピアノソナタの「難易度」
- ハイドンのピアノソナタの「名演」
- ハイドンのピアノソナタの「おすすめ楽譜」
この順番になっています。下記の「もくじ」から気になるところへジャンプすることも可能です。
ハイドンの有名なピアノソナタ作品【人気&傑作】
基本的な情報として、ハイドンのピアノソナタで「傑作」と呼ばれる理由で「短調である」ということが多いです。
また、「人気」の理由としては「ソナチネアルバム」や「ソナタアルバム」に掲載されている…という理由が大きいですね。
まずはハイドンの「傑作」ピアノソナタ
- 第20番 ハ短調 作品30-6 Hob. XVI:20→「アウエンブルッガーソナタ」という名前で有名。短調の傑作
- 第34番 ホ短調 作品42[1] Hob. XVI:34→珍しい短調の作品として有名
- 第36番 嬰ハ短調 作品30-2 Hob. XVI:36→珍しい短調の作品として有名
- 第52番 変ホ長調 作品92, Hob. XVI:52→技術的に華やかで、傑作と呼ばれることも多い
ハイドンのピアノソナタで「傑作」として1番注目されるのは、間違いなく第20番。
ハイドンのシュトゥルム・ウント・ドラング時代を代表する作品。
それまでは「ソナタ」という名称ではなく、「ディヴェルティメント」または「パルティータ」と呼んでいたものを、はじめて「ソナタ」として出版されたという理由もありますね。
またこの第20番から、いわゆる「強弱記号」が使われるようなったこともあって、歴史的にも注目ポイント。
それゆえ巨匠たちがこぞって「名演」を残しているのも、この20番であることが多いです。(オススメの「名演」については、記事の後半でご紹介します)
あと、個人的に「これは傑作…」と思えるのは、第50番XVI50 ハ長調。
理由は、曲想の美しさと構成も素晴らしいし、「ペダル」をハイドンが表記した珍しい作品です。
このペダルが登場する部分も素晴らしい。
では続いて「人気」のソナタを。
ハイドン「人気」のピアノソナタ
- 第28番 変ホ長調 作品14-2 Hob. XVI:28→ソナタアルバムに掲載
- 第35番ハ長調 作品30-1 Hob. XVI:35→ソナチネアルバム、ソナタアルバムに掲載(ダントツに人気で有名!)
- 第40番 ト長調 作品37-1 Hob. XVI:40→ソナタアルバムに掲載
- 第49番 変ホ長調 作品66 Hob. XVI:49→ソナタアルバムに掲載
- 第52番 変ホ長調 作品92, Hob. XVI:52→技術的に難しく、華やかで人気
「子供の頃に35番だけ弾いたことある!」という方も多いほど、有名で人気ですね。
さらに「人気」と「傑作」の両方を兼ねているのが、第52番。
52番が人気な理由としては、なんと言っても「華やかさ」があること。
テクニック的にも1番難しく、コンクールや大学の入試などで演奏した友人・知人も多いです。
ハイドン「ピアノソナタ」の難易度
基本的なハイドンのピアノソナタの難易度としては、「ブルクミュラー〜チェルニー40番プラスα」くらいのイメージでそれほど間違いはないと思います。
またハイドンの場合、バッハのような難解さや、ショパン・リスト以降の作品に現れるテクニカルな要素はほぼないので、「難易度がすごく高い」ということはないです。
とはいえ「音楽的な難しさ」は当然のようにありますね。
下記は、あくまで参考までにテクニック的な「難易度」を3段階に分類してみました。
難易度「難しい」のピアノソナタ
チェルニー40番を卒業するくらいのレベル。
- ピアノソナタ第20番 Hob.XVI:20
- ピアノソナタ第21番 Hob.XVI:21
- ピアノソナタ第32番 Hob.XVI:32
- ピアノソナタ第34番 Hob.XVI:34
- ピアノソナタ第45番 Hob.XVI:45
- ピアノソナタ第48番 Hob.XVI:48
- ピアノソナタ第50番 Hob.XVI:50
- ピアノソナタ第51番 Hob.XVI:51
- ピアノソナタ第52番 Hob.XVI:52
コンクールや入試で使いやすい作品でもありますね。
また現在「ハイドンの再評価」が進んでいて、「これから大学の入試で課題曲になる機会が増えそうだな〜」と思っています。笑
上記の作品あたりから選んで、早めに準備しておくのも良いかもですね。
特に「3度」が登場する50番と52番はこの中で1番、難易度が高く、華やかで「評価が高くなりがち」ということは、あると思います。
難易度「普通」のピアノソナタ
チェルニー30~40番くらいのテクニック。
- ピアノソナタ第5番 Hob.XVI:5
- ピアノソナタ第6番 Hob.XVI:6
- ピアノソナタ第18番 Hob.XVI:18
- ピアノソナタ第19番 Hob.XVI:19
- ピアノソナタ第22番 Hob.XVI:22
- ピアノソナタ第23番 Hob.XVI:23
- ピアノソナタ第24番 Hob.XVI:24
- ピアノソナタ第25番 Hob.XVI:25
- ピアノソナタ第26番 Hob.XVI:26
- ピアノソナタ第27番 Hob.XVI:27
- ピアノソナタ第28番 Hob.XVI:28
- ピアノソナタ第29番 Hob.XVI:29
- ピアノソナタ第30番 Hob.XVI:30
- ピアノソナタ第31番 Hob.XVI:31
- ピアノソナタ第35番 Hob.XVI:35
- ピアノソナタ第36番 Hob.XVI:36
- ピアノソナタ第37番 Hob.XVI:37
- ピアノソナタ第38番 Hob.XVI:38
- ピアノソナタ第39番 Hob.XVI:39
- ピアノソナタ第40番 Hob.XVI:40
- ピアノソナタ第41番 Hob.XVI:41
- ピアノソナタ第42番 Hob.XVI:42
- ピアノソナタ第43番 Hob.XVI:43
- ピアノソナタ第44番 Hob.XVI:44
- ピアノソナタ第46番 Hob.XVI:46
- ピアノソナタ第49番 Hob.XVI:49
技術的には「構成感」のあるチェルニー3,40番といった雰囲気ですね。
実際に弾いてみても「テクニック的に難しい…」という感じはないです。
難易度「低め」のピアノソナタ
チェルニー30番をはじめたてくらいのレベル。
上記にあがらなかった作品は、難易度が「低め」でそれほど間違いはないかと思います。
「難易度」の感覚は、人それぞれなので…。
ハイドンのピアノソナタの「名演」と「名盤」
ハイドンは、オーストリアのウィーンで活躍した作曲家だけど、「名演」という意味では、ロシア人が素晴らしいものをたくさん残している印象です。
おそらくモスクワ音楽院などで、ハイドンの評価が高かったり、リヒテル、ギレリスといった名手が存在したためだと思います。
まず聴くべきはハイドンの傑作「第20番」
「ハイドンのピアノソナタでどの作品が1番録音されているか?」といったら、圧倒的に20番。
世界的な名手がこぞって録音をしているので、歴史に残るようなCDがたくさん見つかるのもこの20番。
素晴らしい作品だけど、「大人な雰囲気」が凄まじいので、ソナチネを弾くような感覚だと少し苦労してしまいそうな印象。
しかし「ハイドンのピアノソナタ、何か名演を聴いてみたいな〜」という時には、ぴったりの作品だと思います。
オススメの演奏
- スビャトスラフ・リヒテル(YouTube。最高の名演!)
- アンドラーシュ・シフ(YouTube。神がかったような名演。音質が悪いので、いい音で聴くならAmazon Music Unlimitedがオススメ)
- エミール・ギレリス(YouTube。ハイドンらしい名演)
- ミハイル・プレトニョフ(YouTube。センス抜群の名演)
シフ以外のピアニストは、ロシア人なので、不思議とハイドンはロシアで評価が高いのか人気なのかな?という印象です。
素晴らしいハイドンの全集あり【名盤】
もし「ハイドンの全集で素晴らしいものがないかな?」と思ったら、エカテリーナ・デルジャヴィナの全集がオススメ。
デルジャヴィナもなんとロシア人で、2010のショパンコンクールで1位になったらアヴデーエワと同門(トロップ門下)の名手。
現在50代で、ロシアの名門モスクワ音楽院の教授でもある方です。
堅苦しさがゼロで、ハイドンらしいとにかく明るい演奏で、聴いていてすごく清々しい演奏です。
コンクールでハイドンを演奏したりする時にも、すごく参考になる全集だと思います。
Amazon Music Unlimitedで無料体験しつつでも聴けます。
ハイドン / ピアノ・ソナタ全集 エカテリーナ・デルジャヴィナ
キーシンの残した名盤「Hob.XVI:30とHob.XVI:52 」
ロマン派作品を得意とするキーシンだけど、若い時にハイドンに力を入れていて、現在でもハイドンの楽譜の運指をするほど。
実は20年ほど前にこのCDを聴いて、かなり感動してマネをして同じ作品を練習してみたことがあります。
「ハイドンの魅力がいまひとつわからない…」という方は多いけど、そんな時聴いてみるとハイドンの魅力に開眼されるかもです!
そしてキーシンもロシア人ですね…!
こちらもAmazon Music Unlimitedで無料体験しつつ聴けます。
ポゴレリチの残した名盤「Hob XVI-46と19」
ポゴレリチは、ユーゴスラビアで生まれてロシアでピアノを勉強したピアニスト。
やっぱりここでも「ロシア」がポイントですね。
ピアノの世界では「マイナー」と思われている上記の2つの作品に、強烈なスポットを当てたような演奏。
「あれ、ハイドンってこんなにいい曲を作曲してたんだ!」と間違いなく思わせてくれるような演奏ですね。
完成度はとびっきり高く、さらに骨太な音色、そして清々しさを失わない演奏はとにかく素晴らしいと思います。
Amazon Music Unlimitedで無料体験しつつ聴けます。
Haydn ハイドン / ピアノ・ソナタ第19、46番 ポゴレリチ
ハイドンのピアノソナタでおすすめの楽譜
- 基本は「ヘンレ版」もしくは「ウィーン原典版」が使いやすく、信頼性も高くオススメ
- ソナチネ、ソナタアルバムに掲載されているなら、全音もオススメ
- 全音に掲載されていない作品も多い
- ヘンレ版に「キーシンの運指」と「シフの運指」のピースあり
これらを順番に解説してみます。
基本は「ヘンレ版」もしくは「ウィーン原典版」
世界的にも「定番」として使われているこの2つの楽譜が良いと思います。
Amazonが安かったり、楽天市場が安かったりするので、それぞれチェックするのが良いと思います。
ヘンレ版⬇️
ウィーン原典版⬇️
有名なソナチネ・ソナタアルバムを利用する【オススメは今井版】
弾きたい曲が、ソナチネアルバムなどに入っていれば「全音」の楽譜を利用するのも良いと思います。
注意点として、かなり古いものも出版されているけど、現在なら今井顕先生が校訂された楽譜が、原典版に順書されていて、さらに見やすくてオススメです。
古い出版のものに比べると、やや値段が高いのですが、それに見合っただけの価値がありますね。
全音は「後期のソナタ」で出版はない
注意点として、ハイドンの後期のソナタは全音での出版はないです。
なので、後期のソナタを演奏するならやっぱりヘンレ版、もしくはウィーン原典版を使う必要がありますね。
選ぶ目安としては、「見やすい、使いやすい、1番人気」→ヘンレ版。そして「価格が安い、信頼性が高い」→ウィーン原典版のようなイメージで間違いないと思います。
【余談】ヘンレ版のシフ&キーシンの運指はかなりいい
もし人気の高い「第52番」を演奏するなら、シフが運指をしたヘンレ版が素晴らしいです。
名手の指づかいがものすごく参考になります。
さらに「第49番」を演奏するなら、キーシンが運指をしたヘンレ版がオススメ。
この2曲に限られてしまうのだけど、素晴らしい楽譜です。
まとめ:ハイドンのピアノソナタ「傑作&人気作品。難易度とおすすめ楽譜」
それではサクッとまとめて終わります。
- ピアノソナタの「傑作」→第20、52番。短調作品に「傑作」が多い
- ピアノソナタの「人気作」→第28、35、49、52番(ソナチネアルバムが人気の火付け役)
- ピアノソナタの「難易度」→ブルクミュラー〜チェルニー40番プラスα
- ハイドンのピアノソナタの「名演奏」→ロシア人に多い
- オススメの楽譜→「ヘンレ版」と「ウィーン原典版」が基本。ソナチネアルバムなら全音の今井版
日本では、モールアルトやベートーヴェンの影に隠れてしまって、いまひとつ人気の出にくいハイドンだけど、これから注目が上がっていきそうな印象です。(モールアルトやベートーヴェンもハイドンを尊敬していた)
ハイドンの魅力は、なんといっても「短調」でも暗くならず、どこまでも「明るい」雰囲気なところかなと。
自宅で遊びで演奏しても、清々しい気持ちになれるのは、すごいメリットだと思います。
それでは最後までありがとうございました。