20世紀の伝説的なピアニスト「アルフレッド・コルトー」についてまとめました。
コルトーの実際の演奏を聴いた人の感想は「涙が止まらない」とか「ロマンに溢れていた」というものばかり。
現代ではそういった演奏が減ってきているので、今こそ注目すべきピアニストかな?と思います。
本記事では、
- アルフレッド・コルトーについてわかりやすく
- コルトーの逸話や名言
- コルトーのオススメ演奏
- コルトーから得られるもの
- 有名な楽譜「コルト版」について
この5つを中心にまとめています。ちなみに2023年現在で、亡くなって61年ほど。
これほど時間が経っても「まったく色あせない」というのもすごい…
それではコルトーについてわかりやすく…から!
アルフレッド・コルトーについてわかりやすく
20世紀を代表する名手であり巨匠のコルトー。
わかりやすいようにピックアップしてみました。
- 1877年スイス生まれ。フランスで活躍。
- 2人の姉にピアノを習う
- パリ音楽院で落第。サンサーンスからの酷評。成績はよくなかった。
- 1907、30歳の時にパリ音楽院の教授に就任
- ヴァイオリンのティボー、チェロのカザルスと3重奏団を結成
- パリ・エコールノルマルを設立
- サル・コルトーというホールがある
- ショパン、シューマンなどロマン派の作品を得意とした
面白いのは、コルトー=フランスのピアニスト。と思われがちだけど、実際はスイスで生まれ、スイスで亡くなっています。
田村宏先生のお話
小山実稚恵さんなどの先生でもある、伝説の芸大の教授、田村宏先生がコルトーの演奏を聴いた感想して、
- ピアノにビブラートがかかることを知った
- 演奏中、涙が止まらなかった
ということをお話されていたことが印象的です。
「涙が止まらなかった」の真相は、コルトーがアンプが飛んでしまって、同じパッセージを何度も演奏しまったとのこと。
それがあまりにも素晴らしく、涙が止まらなかったそうです。(笑)
ちょっと笑ってしまうけど、これは本当にすごいことですね。
【すごい】教育者としても超一流だった
コルトーはピアノを教えることにおいても超一級の方です。
具体的にコルトーに師事した名手を紹介すると、
ディヌ・リパッティ、クララ・ハスキル、エリック・ハイドシェック、遠山慶子
などなど。
コルトーの指導法は、おのおのの個性を大事にするスタイルで、レッスンは「まるでコルトーが詩を読んでいるよう…」だったという記録が残っています。
ピアニスト「ディヌ・リパッティを発掘」
ディヌ・リパッティというピアニストがコンクールで落選した時に擁護して、さらにデビューを助けたのはアルフレッド・コルトー。
ちなみにボクが「世界最高のピアニストは?」と聞かれた時は間違いなくリパッティと答えます。
30代の初頭で若くして亡くなってしまった夭折のピアニストで、天才の中の天才です。
演奏の特徴というと、コルトーと似ているけど、もっと純度を高くしてクセをなくしたようなイメージ。
本当の天才を見抜く「目」を持っていることも、コルトーの魅力だと思います。
リパッティについて、詳しくは下記に書いています。
-
ディヌ・リパッティを語る【ショパンとバッハの名盤あり】
続きを見る
アルフレッド・コルトーの名言「1日練習しなければ…」
1日練習しなければ自分に分かる。2日練習しないと批評家に分かる。3日練習しないと聴衆に分かる
というのは、1番有名な名言です。
この言葉はいろいろな情報がでまわっていて、ルービンシュタイン、ハイフェッツ、パデレフスキの言葉としても扱われるけど、コルトー説が正解だと思います。
理由は、いかにもコルトーっぽいため。
そのほかの有名なコルトーの名言としては、
- 午前中を中心に5時間ほど練習すること
- 難しいところは、そのまま練習するのではなく、本質的な難しさを探りながら練習すること
このあたりは有名です。
アルフレッド・コルトーの5つのオススメ演奏「まずはショパン」
コルトーは生前、たくさんの録音を行っていて、現在でもCD40枚の全集が発売されています。
この40枚の全集をすべて実際に聴いてみてその中から、オススメの演奏ご紹介してみます。
YouTubeで聴けるものもありますし、Amazonや楽天で手に入れることも可能です。
現在、簡単に聴く方法としては、YouTubeに音源がない場合、Amazon Music Unlimitedがベストだと思います。(無料体験もあり)
ではここからは、コルトーのオススメ演奏を!
1. ショパン 練習曲
コルトーは練習方法を達人でもあって、練習曲では有名なコルトー版を残しています。
現代でも音大生などを中心に、
- テクニックの模範→ポリーニ
- 音楽生の模範・参考→コルトー
という雰囲気は残っていますね。
現代でテクニックは通じないものの、ものすごく味のあるエチュードです。
2. ショパン バラード
2015年のショパンコンクールで1位なったチョソンジンさんの先生であるミシェル。ベロフさんの言葉を引用すると、
コルトーと、ツィメルマンの演奏するショパンのバラード聴くと「こうでしかない」と印象を受ける
とのこと。たしかに聴いてみるとそんな印象を受けますね。
参考文献は「音符ではなく、音楽を! 現代の世界的ピアニストたちとの対話」という本で、値段はかなり高いけど素晴らしい本です。
3. シューマン 子供の情景
シューマンの子供の情景は、子供さんでも演奏することができるけど「音楽的に素晴らしく…」というと、本当に難しい…
それゆえ有名作品ではあるけれど、コンサートのプログラムに組まれることは、実際のところ少ない印象です。
そんな中、コルトーはとびっきりの名演を残しています。
ちなみにコルトーの他にもホロヴィッツやアルゲリッチなどが「子供の情景」の素晴らしい録音を残していますね。
現在CDは見つからないのですが、Amazon Music Unlimitedで聴けます。
4. ブラームス=コルトー 子守唄
コルトーは演奏だけでなく、楽曲の編曲も行っています。
その中でもとりわけ素晴らしいのが、このブラームスの子守唄。
あまりにも素晴らしくて、寝られないほど。笑
「ピアノを歌わせる」という意味で、これ以上ないとすら思える名演です。
» ブラームス=コルトー 子守唄(YouTubeで今のところ聴けます)
5. フランク ヴァイオリンソナタ
もちろんコルトーがバイオリンを演奏しているのではなく、ヴァイオリンはティボーによるもの。
コルトーはその伴奏をしています。
2人のフランスの名手が奏でる、フランス作品の最高傑作で絶対に聴いてみた方が良い音源。
» フランク ヴァイオリンソナタ(こちらも現在YouTubeで聴けます)
YouTubeは、リンク切れになってしまう可能性が高いです。
その場合、Amazon Music Unlimitedで、音質も良く聴けます。
コルトーから得られるもの【→練習方法とロマンチックな表現】
チョソンジンさんがショパンコンクールで1位を取った時のインタビューで、「ピアノに触っているのは3時間くらいにして、あとはアルゲリッチとコルトーの演奏を聴いて、耳から練習していた」とお話されていました。
というわけで、コルトーの演奏から得られるものを。
コルトーの練習方法
コルトーは、テクニック的な才能には恵まれていなかったと思います。
それゆえ「ミスタッチの名人」と呼ばれてしまったりもするけど笑、それゆえテクニックの習得に悩んでいたらコルトーの著書を参考にするのもオススメです。
オススメな本は2つで「コルトー 版」と呼ばれるもので、記事の後半で詳しく解説してます。
ショパンコンクールにもトレンドが?【コルトーの表現方法】
かなり主観だけど、ショパンコンクールの優勝者と、その時のトレンドをまとめてみました。
- 1985年→ブーニン→演奏の魅力、スター性
- 2000年→ユンディ・リ→演奏の魅力、スター性
- 2005年→ブレハッチ→ショパンの心に忠実、テクニックの正確さ
- 2010年→ユリアンナ・アヴデーエワ→完成度の高さ
- 2015年→チョソンジン→完成度の高さ
- 2021年→ブルース・リウ→個性的な魅力、演奏の楽しさ
- 2025年→?
「完成度の高さ」という意味では、チョソンジンさんの登場で「終わってしまった」という印象を受けました。
2021年に1位のブルース・リウさんは、完成度の高さではなく、間違いなく「個性的な演奏」。聴く人を楽しい気分にさせるような魅力を持った方です。
それゆえ2021年のトレンドは「個性的な魅力…」だと思います。
2021年の入賞者は皆さん個性的で、2015年に参加したらガラリと入賞者が変わったかと思います。
2025年のトレンドを予想してみた
結論、19世紀的な演奏が復活してくるのでは?と思っています。
20世紀後半は、世界中のコンクールや音大で「楽譜に忠実に」がトレンドでした。
もう到達して「飽き」がきて、原点回帰のような流れが来ると予想してます。
コルトーのようなショパンの真髄をついたような名手が登場するんじゃないですかね?
コルトーに対する批判あり??
世の中には、アンチコルトーの意見もあるのでさくっとまとめてみました。
- 楽譜に忠実じゃない
- 指のトレーニングが意味ない
の2つ。
「1」の楽譜に忠実じゃないって、言われたりもするけど、これはコルトーが19世紀生まれなので…
「2」の指のトレーニングも海外の有名な先生が公開レッスンなどで「使わない方がいい」と話をされていることもありますね。
現代はテクニックのレベルがとにかく上がってきているので、そんな意味もあると思います。
有名な楽譜「コルトー版」について【ショパン・ピアノメトード】
コルトー版は有名な楽譜だけど、その中でも特に有名なのが「ショパンの練習曲」と「ピアノメトード」
ショパンの練習曲集
1曲ずつコルトーによる練習方法が書かれている楽譜です。
さらにコルトーによる指遣いも書かれてあって、驚くほど弾きやすい指づかいあることも事実です。
ショパンの楽譜の1冊目としてはオススメできないけど、「テクニックの習得」という意味ではオススメできる楽譜です。
ショパンのオススメ楽譜は、こちらの別記事で解説しています。
ピアノメトード
このピアノメトードは、テクニックの習得のためにコルトーによって書かれた楽譜です。
イメージとしては有名な練習曲「ハノン」のレベルを上げた感じ。
例えばショパンの練習曲とかに取り組んでいるなら「必要ないかな?」という印象だけど、その一歩手前の方とかには重宝するはず。
実際、ネット上の口コミを見ると、この「ピアノメトード」の評価は驚くほど高いのです。
まとめ:伝説の名ピアニスト「アルフレッド・コルトー」
要点をサクッとまとめて終わります!
- コルトー→20世紀を代表する名手
- ロマンあふれる演奏で魅了した
- 教育者としても超一流
- 名言→「1日練習しなければ‥…」
- オススメ演奏→ショパン「練習曲、バラード」シューマン「子供の情景」
- コルトー版を試すなら→ショパンの練習曲&ピアノメトード
それでは最後までありがとうございました。